当クリニックの予防接種について
肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌は、肺炎の原因となる細菌の中でも重要なもののひとつです。肺炎は適切な治療で改善することが多い一方、高齢の方や持病のある方では重症化し、入院や身体機能の低下、時に命に関わることもあります。
肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による肺炎や侵襲性感染症(髄膜炎や敗血症など)の予防、そして重症化予防を目的としたワクチンです。特に、65歳以上の方、心臓病・呼吸器疾患・糖尿病・腎臓病などの基礎疾患がある方、脾臓摘出後の方、免疫機能が低下している方では接種が勧められます。
どんな方が受けたほうがいいか
65歳の節目では、肺炎球菌ワクチンに対して市町村から補助が出ます。65歳以上の方は、ぜひ接種を検討しましょう。以前ニューモバックスNP(2025年度以前の定期接種)を受けたことがある方も、1年以上経過していれば、プレベナー20またはキャップバックスの再接種を検討しましょう。
64歳以下でも、以下のようなリスクのある方では、肺炎球菌ワクチンによる予防が重要とされています。
- 免疫不全状態のある方
具体的には、HIV感染症、原発性免疫不全、血液腫瘍、がん治療中、ステロイド全身投与中、免疫抑制薬・生物学的製剤使用中、臓器移植後、造血幹細胞移植後などです。 - 無脾症・脾摘後
脾臓がない場合、肺炎球菌に対する免疫力が低下し、重篤な侵襲性肺炎球菌感染症のハイリスクとなります。 - 慢性心疾患
慢性心不全、虚血性心疾患(心筋梗塞後・狭心症など)があげられます。 - 慢性呼吸器疾患
COPD、気管支喘息、慢性呼吸不全、気管支拡張症などがあたります。 - 慢性腎疾患
透析中の方はもちろん、腎機能が低下した方、ネフローゼ症候群などが該当します。 - 糖尿病
- 慢性肝疾患
肝硬変や慢性肝炎があたります。 - 髄液漏・人工内耳などの解剖学的リスク
現在使われる主な肺炎球菌ワクチン
現在、成人で用いられる肺炎球菌ワクチンには
- プレベナー20(PCV20)
- キャップバックス(PCV21)
があります。
2026年4月から、高齢者の定期接種で使用されるワクチンは、従来のニューモバックスNP(PPSV23)からプレベナー20(PCV20)へ変更されました。
※ニューモバックスNP(PPSV23)は、23種類(プレベナー20がカバーする血清型のうち1種類〔6A〕を除き、新たに4種類〔2、9N、17F、20〕を加えた23種類)の血清型をカバーする多糖体ワクチンです。広い血清型をカバーしていますが、結合型ワクチンと比べると、免疫の持続や免疫記憶の面で限界があり、5年以上あけて再接種が検討されてきました。
プレベナー20(PCV20)は、20種類の血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、33F)のポリサッカライド(PnPs)とキャリア蛋白質(CRM197)との結合体(PnPs-CRM197)からなる結合型ワクチンです。2024年に日本で承認されました。
莢膜多糖体抗原にキャリアたんぱくを結合させており、莢膜多糖体抗原による免疫応答、莢膜多糖体抗原とキャリアたんぱくによる免疫応答、そして体内に元々存在しているメモリーB細胞による免疫応答という、3つの経路から免疫応答が誘導されます。そのため、より強力で持続的な免疫効果が期待されています。2026年度から高齢者の定期接種に使用されており、原則として1回接種です。
キャップバックス(PCV21)は、2025年に日本で発売された21価の結合型ワクチンです。21価といっても、プレベナー20に単純に1種類の血清型を追加したわけではなく、成人用に開発されたため、カバーする血清型はかなり異なります。
小児ではプレベナーの定期接種が行われています。そのため、プレベナーに含まれる血清型由来の侵襲性肺炎球菌感染症は減少した一方で、それに含まれていない血清型による侵襲性肺炎球菌感染症が増加しており、これを「血清型置換」と呼びます。成人においても、小児への定期接種による間接効果(集団免疫)によって、プレベナーに含まれる血清型の肺炎球菌感染症は低下傾向にあります。しかし、依然としてプレベナーにも含まれる一部の血清型による感染症は残存しており、さらに15A、23A、35Bなど、従来のワクチンに含まれていない血清型による感染も多く認められています。
そのためキャップバックス(PCV21)は、小児へのプレベナー定期接種開始後の成人の疫学を考慮し、成人の主要な肺炎球菌感染症の原因血清型に対応するよう設計されています。成人の侵襲性肺炎球菌感染症の主要因である21種類の血清型(3、6A、7F、8、9N、10A、11A、12F、15A、15Bのo-脱アセチル化体、16F、17F、19A、20A、22F、23A、23B、24F、31、33F、35B)とキャリア蛋白質(CRM197)との結合体からなる結合型ワクチンです。
未だ検出される既存ワクチン含有血清型に加え、新たに8種類の血清型(15A、15Bのo-脱アセチル化体、16F、23A、23B、24F、31、35B)を含有しています。交差反応性血清型15B(血清型15Cに対する交差)に対しても免疫原性を示し、血清型特異的オプソニン化貪食活性反応の誘導も確認されています。そのため、既存ワクチンよりも広い予防効果が期待されています。
参考:日本ワクチン学会|65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方
公的補助について
現在の高齢者肺炎球菌ワクチンの定期接種の対象は、
- 65歳の方・60~64歳で、心臓・腎臓・呼吸器機能障害やHIVによる免疫機能障害があり、日常生活が著しく制限される方
です。
2026年4月から、定期接種で使用されるワクチンはプレベナー20(PCV20)1回となりました。公費助成の有無や自己負担額は自治体ごとに異なります。
鳥取市でも、2026年度の高齢者肺炎球菌予防接種は、65歳の方と一定の障害のある60~64歳の方が対象です。なお、過去に肺炎球菌ワクチンを接種したことがない方が原則対象ですが、過去の接種が任意接種で、医師が必要と認める場合は接種できると案内されています。
一方、キャップバックスや、定期接種対象外の年齢で受けるプレベナー20は、通常は任意接種(自費)となり、公費補助の対象にはなりません。
接種の考え方 結局どれがいいのか
これまで一度も肺炎球菌ワクチンを受けたことがない方では、プレベナー20(PCV20)またはキャップバックス(PCV21)が選択肢になります。
現時点では、成人で問題となる血清型へのカバーを重視して設計されている点から、キャップバックスのほうが、より広い予防効果が期待されています。これは、成人用に設計されていることに加え、小児でもプレベナー20の定期接種が生後2か月から6歳未満を対象に行われており、その間接効果によってプレベナー20がカバーする血清型の肺炎球菌感染症が今後さらに減少すると考えられていることも影響しています。
ただし、プレベナー20は定期接種として公費助成の対象となっているため、公費対象の方では、プレベナー20を1回接種する方法も十分合理的です。
インフルエンザワクチン
インフルエンザの予防対策で最も効果が高いとされているのがインフルエンザワクチンです。1回の接種でより有効にしたい場合は、接種時期も見極める必要があります。
インフルエンザは、日本では12月~3月の期間にかけて流行します。1回のワクチン接種による持続有効期間は約5ヵ月、また接種後に効力が得られるまでに2週間程度はかかります。そのためワクチンの効果をできるだけ高くしたい場合は、流行のピークとなる1月より前、12月中旬までに接種を終える必要があります。
コロナウイルスの流行に対する感染対策で、インフルエンザウイルス感染流行も抑えられましたが、結果的にインフルエンザウイルスへの免疫が落ちている方が増えています。インフルエンザワクチン接種の利益があると思われます。
新型コロナウイルスワクチンについて
2025年8月時点の新型コロナワクチンについて解説します。
コロナウイルス群は、終生免疫が得られないので、原則として一度かかってもまたかかります。新型コロナウイルスは変異しやすいので、その点からも複数回感染しやすくなります。
一方でインフルエンザウイルスは終生免疫が得られますが、血清型が多いため、その血清型のウイルスに対する免疫がないとまたかかることになります。
新型コロナウイルスはウイルス分類上、ニドウイルス目コルニドウイルス亜目コロナウイルス科オルトコロナウイルス亜科に分類され、オルトコロナウイルス亜科は、アルファコロナウイルス属とベータコロナウイルス属とガンマコロナウイルス属の4属に細分化されます。
| ウイルス | 分類 | ウイルス受容体 | 発見 |
|---|---|---|---|
| ヒトコロナウイルス229E | アルファ | アミノペプチダーゼN | 1960年代頃 |
| ヒトコロナウイルスC43 | ベータ | N-アセチルノイラミン酸 | 1960年代頃 |
| ヒトコロナウイルスNL63 | アルファ | ACE-2 | 2004年 |
| ヒトコロナウイルスHKU1 | ベータ | N-アセチルノイラミン酸 | 2005年 |
| SARSコロナウイルス-1 | ベータ | ACE-2 | 2003年 |
| MERSコロナウイルス | ベータ | DPP4 | 2012年 |
| SARSコロナウイルス-2 (新型コロナウイルス) (COVID-19) |
ベータ | ACE-2 | 2019年 |
ACE-2は全身にありますので、この新型コロナウイルス感染で多彩な症状が起こってきます。
参考:https://journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1009037
1)いま使われているワクチンと基本方針(日本)
- 定期接種の枠組み:2024年度から新型コロナワクチンは定期接種(B類)に位置づけられており、対象は65歳以上と60–64歳の一定の障害等を有する方で、毎年秋冬に1回が基本となります。
- 全額公費は2024年3月31日で終了し、原則有料(自己負担あり)です。お住いの市町村によって助成額は異なります。
- 2025年度(令和7年度)の助成の詳細はお住いの市町村からの情報をお待ちください。
日本で使用されるワクチンの種類
mRNA、レプリコンRNA、組換えタンパクがあります。
mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン
mRNAワクチンは、ウイルスのタンパク質をつくるもとになる遺伝情報の一部(mRNA)を注射します。mRNAをもとに、細胞内でスパイクタンパク質が産生され、そのスパイクタンパク質に対する中和抗体産生や細胞性免疫応答が誘導されることで効果を発揮します。現在の新型コロナウイルスワクチンはこの種類が主に利用されてきました。
レプリコンワクチン
レプリコンワクチンはmRNAワクチンの一つですが、接種されたmRNAが細胞内で一時的に複製され、既存のmRNAワクチンよりも長時間、より強く免疫が誘導されます。
組換えタンパクワクチン
組換えタンパクワクチンは、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパク質の遺伝子をもとに作られた組換えタンパク質を有効成分とするワクチンであり、接種後、ヒトの体内でスパイクタンパク質に対する免疫が誘導されることで、新型コロナウイルス感染症の予防ができると考えられています。
現在新型コロナワクチンによる死亡は高齢者や基礎疾患を持つ方に多いことから、そのような方に対して助成を設け、ワクチン接種をすすめています。
2)発症予防効果
日本国内データ(2024–2025シーズン、主にJN.1対応):発症予防(外来受診レベル)効果
国内の報告(Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第12報)によると2024年10月–2025年3月において、新型コロナワクチン(JN.1 1価)の発症予防効果は
- 18歳以上の成人で(対象者の年齢中央値は51歳、65歳以上が32.7%、男性が48.1%、基礎疾患を有するものが33.7%)発症予防の有効性は54.6% (95%信頼区間: 29.9~70.6%)。65歳以上では52.5% (95%信頼区間: 15.9~73.2%)
- 接種後7~60日の有効性が55.5% (95%信頼区間: 20.7~75.0%)、接種後61日以上では53.5% (95%信頼区間: 12.8~75.2%)。
とされています。
3)重症化予防効果
日本国内データ(2024–2025シーズン、主にJN.1対応):重症化予防効果
国内の報告(Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第12報)によると2024年10月–2025年3月において、新型コロナワクチン(JN.1 1価)の重症化予防効果は
・60歳以上を解析対象(883名。対象者の年齢中央値は83歳で、男性が59.0%、基礎疾患を有するものが98.3%、高齢者施設の入所者が29.9%)とし、入院予防の有効性は63.2% (95%信頼区間: 14.5~84.1%)と推定。入院時に呼吸不全を伴う患者、CURB-65スコアに基づいた重症度が中等症以上の患者、肺炎がある患者に限定した解析においても、同様の有効性が確認された。
とされています。
4)長期的影響(いわゆるLong COVID)に対する効果
系統的レビューやコホート解析では、感染前接種がLong COVIDリスクを低減する可能性が繰り返し示されています。
ただし、3回以上接種した患者における、後遺症予防効果はまだ議論のあるところです。
ウイルスの受容体の場所が全身にあることを考えると新型コロナワクチンに何度も感染しても大丈夫ともいいきれません。
5)安全性と小児への考え方
コロナワクチンが感染する標的臓器は、気道だけでなく全身にあることがわかっています。そのためワクチンによって誘導された免疫による有害事象も、インフルエンザワクチンとは異なっています。
重篤な副反応といわれるアナフィラキシーに関しては、従来のワクチンとさほど変わりません。
発熱や倦怠感、接種部位の痛みはインフルエンザワクチンなどより強く、頻度が多い印象ですが、軽快しますのであまり心配いりません。
心筋炎・心膜炎
心筋炎、心膜炎は新型コロナワクチンで特に懸念される副反応です。若年男性でリスクが高いことが知られています。多くは軽症〜中等症で回復します。頻度は稀です。
ワクチンではなく新型コロナウイルス感染によっても心筋炎心膜炎は起こります。国内でのデータでは新型コロナウイルス感染症による入院患者のうち、15~39歳男性の心筋炎・心膜炎が疑われた報告頻度は100万人あたり834人(2021年5月31日時点データによる解析)です。ワクチンの接種によって頻度が上がるというわけではありません。
ワクチンによる心筋炎・心膜炎の発生率は0~4歳の小児では報告がありませんが、5~11歳で100万回接種あたり0.7件(BNT162b2(Pfizer/BioNTech)、2022~2024年)28),30)、思春期年齢である10~14歳、15~19歳ではそれぞれ4.3件(男6.5、女1.7)、2.3件(男4.3、女0.3)(BNT162b2 (Pfizer/BioNTech)、2021~2023年)、9.5件(男19.6、女0.0)、19.5件(男37.2、女2.3)(mRNA-1273(Moderna)、2021~2023年)30)と特に男性で比較的高く、注意を要します。モデルナ製で頻度が多い印象です。因果関係が否定できない死亡例が小児でも一例報告されています。
その他の副反応
心筋炎・心膜炎以外のワクチンの有害事象はあまり目立ったものはありません。ワクチン接種後に亡くなった方はいるのですが、ワクチンとの因果関係が証明された方は極めて少ないです。
参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/newpage_00156.html現時点での当院の見解としては、小児や20代までの方については、一律にワクチン接種はすすめません。この年齢層においては、新型コロナワクチンによる重症化のリスクは低いからです。基礎疾患のある方は、性別も踏まえ、リスクベネフィットを考慮し、接種するか相談しましょう。マスク・手洗いなど一般的な感染対策で予防できたらそれに越したことはありません。
当院の見解:2025年8月時点
- ワクチンは現在流行が予想されるニンバス株(NB.1.8.1)にも有効が期待されるファイザー製コミナティ(JN.1系統 LP.8.1 )を採用します。
- メーカーによっては旧型のXEC株への対応のため、今シーズンはメーカーによって効果が異なると考えられます。
- 入院や死亡の回避のために高齢者は接種をお勧めします。
- コロナ後遺症の予防のため壮年期は接種をお勧めします。(院長も接種予定です)
- 若年者にについては一律に接種はお勧めしません。持病がある方は主治医と相談しましょう。一般的な予防に努めましょう。症状強ければコロナウイルス感染症に対する治療薬(ゾコーバ)を考慮しましょう。
帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹は、昔かかった(多くは子供のころ)水疱瘡(みずぼうそう)のウイルスが、長年体の中に潜んでいて、免疫力の低下に伴い、再活性化しておこります。特徴的なぶつぶつがでて、痛みがでます。ぶつぶつは体の片側(正中を超えない)に帯状に(方言で胴巻きといわれます)、赤みを伴った水膨れでやがて破れてかさぶたができます。痛みは長く残り、生活に支障をきたすことがあり、帯状疱疹後神経痛といわれます。
コロナ禍後に、帯状疱疹が増えていると話題です。やや若い方にも増えている印象ですが、確定的なデータはまだありません。運動不足やストレスなどが原因といわれています。この帯状疱疹を予防するワクチンがあります。ワクチンの種類は昔からあるワクチンと最近発売されたものがあります。帯状疱疹予防目的にワクチン接種をする場合、目安として50歳以上の方が受けたらよいとされています。
弱毒生水痘ワクチン
昔からあるワクチンです。水疱瘡の予防に使われてきましたが、帯状疱疹の予防にも使えます。弱くしてありますが、活性のあるウイルスですので免疫抑制状態もしくは免疫抑制薬を使用している場合、癌の治療中の方は使えません。安価(約7000円)ですが肝心の予防効果に乏しく、持続期間も短い(5年間、50%〜60%帯状疱疹の発症を予防)とされます。
当クリニックでは弱毒生ワクチンより下記の不活化ワクチンをお勧めしています。
シングリックス:不活化ワクチン
最近発売開始となった不活化ワクチンといって、生きているウイルス成分はないので、水疱瘡を発症することはありません。高価(1回約23,000円)で、2回の接種が必要ですが、帯状疱疹の予防効果が非常に高く、9年間は持続するといわれます。筋注でコロナワクチンと同様に発熱や局所の痛みが結構な頻度で起こります。
帯状疱疹に罹患すると仕事できないくらい痛むことが多く、また後遺症が残る方もしばしばです。ワクチンによる予防もぜひご検討ください。効果の点ではシングリックスのほうがよいでしょう。なお万が一帯状疱疹になった場合は、早期に抗ウイルス薬と鎮痛薬を飲んだほうが良いため、できるだけ早く病院を受診しましょう。
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン
子宮頸がんは年間約1万人が罹患し、約2,800人が死亡してします。特に50歳以下の若い世代での発症が問題になっており、30代の若い方でも発症しています。
子宮頸がんの95%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因です。子宮頸部にこのウイルスが感染するためで、性交渉によって感染します。性行為を介して咽頭や陰茎、直腸に感染し、その部分の癌の原因になることもあり、男性には無害というわけではありません。
性交渉の経験がある女性のうち50%~80%は、HPVに感染していると推計されています。HPVに感染しても殆どが治癒しますが、そのうち一部の女性が将来高度前がん病変や子宮頸がんを発症します。通常癌の発生までは数年~数十年要しますが、前がん病変の状態には10代でもなりえます。前がん病変の状態では、症状がなくがん検診を受診しないと気付くことはできません。検診は100%でないため、子宮頸がんに至っても見逃される可能性は0ではないですし、検診で見つかって治療をしても再発、転移してなくなる方もおられます。
またがんが見つかった場合、子宮摘出に至るため、将来子供を産むことができなくなります。ごく早期の癌、もしくは前がん病変の段階で見つかった方は、円錐切除といって、ウイルスが感染した子宮の一部を切り取る手術がなされますが、不妊、流産のリスクを高めるため、決してリスクがないわけではありません。予防することに越したことはありません。
このワクチンはHPVに感染する前に接種し、感染を予防するのが目的で、まだ性交渉を行っていない時期に接種する必要があります。すでに感染したウイルスを排除する効果はありません。年齢を重ねるにつれて性交渉の機会も多くなるため、できるだけ20歳未満でのワクチン接種が望まれます。予防効果は高く、定期接種が進んだ海外の国では、子宮頸がんは大幅な減少を見ています。
ワクチンは現在3種類あり、有効なウイルスの型が異なっています。
HPVの中で、HPV16型、HPV18型は特に前がん病変や子宮頸がんへ進行する頻度が高く、スピードも速いと言われています。
サーバリックスはこの16型と18型に対して効果をもつワクチンです。免疫を強く誘導し20年以上抗体を維持してくれるため、子宮頸がんの予防効果は高いといえます。一方で副作用がやや目立ち、局所の痛みやだるさが多く見られます。
ガーダシルは6型、11型、16型、18型に対して効果のあるワクチンです。6型、11型は性感染症といえる尖圭コンジローマの原因となります。子宮頸がんに加えて尖圭コンジローマの予防効果もあります。痛みなどの副反応もサーバリックスよりマイルドとされています。予防効果も決して低いわけではありません
サーバリックス、ガーダシルの子宮頸がんの予防効果は70%程度とされます。
シルガード9はガーダシルが対応した6型、11型、16型、18型にくわえてさらに5つの型(31、33、45、52、58型)にたいして予防効果があります。子宮頸がんの予防効果は、より高く、90%程度とされています。局所の腫れや痛みはガーダシルより強いようですが、全身的な副症状について差はありません。
日本では、平成15年(2013年)6月から、副反応問題のため接種勧奨の差し控えが約9年続いていました。しかし、上記のようにHPVワクチンの効果と安全性に関する多くの知見が得られたため、令和4(2022年)年4月より定期接種の積極的接種勧奨(対象者にワクチンの接種券やワクチンの効果や安全性に関する内容のリーフレットが送られること)の再開と、情報が届かなかったために接種機会を逃した女性への無料キャッチアップ接種が開始となりました。定期接種の対象は小学校6年生から高校1年生相当の女子ですが、無料キャッチアップ接種の対象者は、平成17年度生まれ(令和4年度に25歳になる学年)までの女性が3年間カバーされることになりました。
シルガード9も公費で接種可能となりました。シルガード9で接種を開始する方は、1回目の接種を受けるときの年齢によって接種のスケジュールが異なり、合計2回または3回接種します。合計2回の接種で完了できる方は、1回目の接種を小学校6年生の年度から15歳の誕生日の前日までに受け、その後、5か月以上あけて2回目の接種を受けた方です。1回目を15歳になってから受けた方は、その2か月後に2回目、6か月後に3回目を接種します。いずれの場合も、1年以内に規定回数の接種を終えることが望ましいとされています。
今後接種回数の推奨は変わる可能性もあります。
鳥取市の子宮頸がん予防(HPV)ワクチン接種について予防接種(保険外診療)の費用
保険外診療となる予防接種については実費の負担をお願いしております。












