生活習慣病とは

生活習慣病イメージ

日頃の食事や運動習慣、休養の取り方、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる病気を総称して生活習慣病と言います。代表的な疾患としては、高血圧症、糖尿病、脂質異常症などがあります。がんや心臓病、脳卒中も生活習慣病に含まれます。

生活習慣病といっても、その発症には体質も関与し、複合的な病因が影響しているため、生活習慣を変えさえすれば、即治るとか、すべてが解決するということはありません。生活習慣の改善は必須ではありますが、それだけにこだわると、病気のコントロールが悪い時間が続いてしまいます。効果のある薬剤がある場合は、うまく使用し、病気のコントロールをして命綱をまず確保してから、生活習慣改善の努力をするのがよいと思います。

多くの生活習慣病は、自覚症状が出にくいですが、病気のダメージは蓄積し進行するため、症状がでてくるときには、かなり進行した状況になっていることも多いです。そのため定期的に検査や診察を受け、今の状態がどうかを評価する必要があります。

定期的な健康診断の受診を

日頃から定期的に健康診断(特定健康診査=特定健診 等)を受けたほうがいいでしょう。特に血圧、コレステロール、血糖価という動脈硬化に深くかかわる項目は、特定健診のなかみに含まれていますので、無料で年1回は測定できまず。健診で異常を指摘された場合は、放置せず、一度当クリニックをご受診ください。

主な生活習慣病

  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 高血圧症
  • 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
  • 脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)
  • 高尿酸血症 等

脂質異常症

脂質異常症イメージ

血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を、脂質異常症といいます。脂質の異常には、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)の血中濃度の異常があります。これらの増減はいずれも、動脈硬化と関連します。

血液検査によって判断しますが、各項目の基準範囲は以下の通りです。

高LDL
コレステロール血症
LDLコレステロールが140mg/dL以上
境界型高LDL
コレステロール血症
LDLコレステロールが120~139㎎/dl
低HDL
コレステロール血症
HDLコレステロールが40mg/dL未満
高トリグリセライド
血症
トリグリセライド(中性脂肪)が空腹時150 mg/dL以上
随時175㎎/dl以上
高Non-HDL
コレステロール血症
Non-HDLコレステロールが170㎎/dl以上
境界型高Non-HDL
コレステロール血症
Non-HDLコレステロールが150~169㎎/dl
数値の解釈は単純ではありません

上記の基準値は、あくまで暫定的な基準であり、目標値は個々の状態によって異なります。LDLコレステロールは特に、動脈硬化の促進に関係がある重要な因子です。心臓病のなかでも心筋梗塞を起こした方は、特に下げる必要があり、70㎎/dl以下が基準になります。動脈硬化性の病気をどれくらい起こしやすいか、そのリスクの大小によって管理目標値が変わるわけです。高血圧などほかの病気がまったくない方なら150~160程度でも心配ないことがおおいです。
LDLコレステロールが低い方が心臓の冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)が少なくなりますが、脳出血は逆に増えるのではといわれています。年齢や持病によって、治療の効果が限られることもあります。そのため数値だけで判断することなく、年齢や、どのような病気が合併しているかなどによって管理の方針を決めていきます。

冠動脈疾患や動脈硬化が強く関係するタイプの脳梗塞:アテローム血栓性脳梗塞を起こしたことがある方は、厳密にLDLコレステロールを下げた方がよいので、まず内服治療が必要です。
まだそのような病気を起こしたことがない方は、今後の人生で動脈硬化性疾患を発症するかどうかのリスクを計算し、目標値を決めていきます。

多くは発症の原因がはっきりせず、体質に加えて生活習慣が影響するわけですが、家族性コレステロール血症などのように遺伝的要素が強い場合や、甲状腺機能低下症などほかの病気があって脂質異常が引き起こされている場合があります。このような場合は治療方針が異なりますので、初めて指摘されたときにはこのような背景がないか評価を行います。

治療は食事・運動・薬剤

食事療法は脂質異常症の治療の基本です。食事療法としてはまず適正なカロリー摂取を心がけることが重要です。摂取カロリーが高すぎる場合、制限し肥満の是正を行う必要があります。適正なカロリー摂取を踏まえたうえで、動物性脂肪を少なくする必要があります。
実は食べるコレステロールの量を少なくしても、あまり血中のコレステロールには影響しません。多すぎないようにと意識するくらいでよいです。植物性脂肪(サラダ油など)はコレステロールが含まれておらず、摂取するほどコレステロールは下がる方向に働きますが、取りすぎはもちろんよくありません。野菜や食物繊維を多く取り入れることもよいとされます。

運動療法は、中性脂肪の数値を下げ、HDLコレステロールを増やす効果が期待できます。内容としては、有酸素運動(早歩きや、ゆっくりとしたジョギング、水泳、サイクリング )を1日30分以上行うことが推奨されます。

コレステロールに直接影響しませんが、動脈硬化性疾患の発症を防ぐことが目的なので、禁煙が重要です。過度な飲酒も見直す必要があります。

生活習慣の見直しだけでは、数値が十分に改善しない場合は、併行して薬物療法を行います。高LDLコレステロール血症の方には、主にスタチンが使用されます。不十分な場合はエゼチミブ、PCSK9阻害薬が使われます。高トリグリセライド血症の患者様では、フィブラート系、ニコチン酸誘導体、オメガ-3系多価不飽和脂肪酸の薬物が用いられます。また低HDLコレステロール血症には、特別な治療薬はありませんが、高LDLコレステロール血症と同様の治療が適用されることが多いです。

糖尿病

糖尿病イメージ

糖尿病とは、血糖値(血液中に含まれるブドウ糖の濃度)が高くなってしまう病気です。

血液中のブドウ糖は、細胞に取り込まれることで脳や体のエネルギー源となります。ブドウ糖が細胞内に取り込まれるにはインスリンが必要です。インスリンは膵臓で作られるホルモンの一種です。このインスリンの量が少ないか、あっても効きが悪い状態(インスリン抵抗性)になるとブドウ糖は細胞に取り込まれず、血液中でダブつくようになります。すると血糖値(血中に含まれる)は下がることなく、上昇したままとなってしまうのです。これが糖尿病です。

糖尿病の種類について

糖尿病は成因別に「1型糖尿病」「2型糖尿病」「その他の特定の機序、疾患による糖尿病」「妊娠糖尿病」の4つの病型に分類されています。
1型糖尿病は、主に自己免疫疾患によって、インスリンを作る膵臓のβ細胞が破壊されてしまうことでインスリンがほぼ分泌されない状態になります。多くは数か月でインスリンがほぼ分泌されなくなります。一部は1週間程度で急激に進行し、ケトアシドーシスという重篤な状態で発症することがあります。緩徐進行型といって半年~数年かけてゆっくりとインスリンが枯渇していくタイプもあります。
2型糖尿病は加齢変化や遺伝素因(体質)に環境要因(生活習慣)が重なることによって発症します。多くの場合、過食による肥満や運動不足などの生活習慣の乱れによって、膵臓は疲弊している状態で、インスリンの分泌の量が少ない、もしくは量はあっても効きが悪くなっています。日本人の糖尿病患者の9割以上が2型糖尿病です。

そのほかにも、遺伝子異常や他の病気の発症(膵外分泌疾患、内分泌疾患、肝疾患 等)、薬剤の影響によって発症する二次性糖尿病、妊娠中に胎盤から分泌されるホルモンの影響によって糖代謝異常となる妊娠糖尿病もあります。なお妊娠糖尿病については、完全な糖尿病ではありません。ただ妊娠前から糖尿病を発症している方は、血糖をしっかり管理していく必要があります。

糖尿病の症状には、喉の渇き、多飲、多尿、倦怠感、体重減少等があります。 ただし、初期の段階では目立った症状がなく、糖尿病になっていることに気付かないケースも少なくありません。

合併症が問題

血糖値が高い状態が続くと、いろいろな問題がおこりこれを合併症といいます。糖尿病の場合特徴的に細かい小さな血管が障害される細小血管症が起こります。細かい血管が集中する網膜、末梢神経、腎臓の障害が起きやすく、糖尿病三大合併症(糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、糖尿病腎症)と言われています。また太い血管(動脈)では、動脈硬化を促進させるので、虚血性心疾患(狭心症、心筋障害)、脳血管障害(脳梗塞 等)などの合併症も起きやすくなります。糖尿病は血管がやられる病気といえます。
また血糖が高いことにより、免疫能がさがり、バイ菌やウイルスの感染に弱くなったり、重症化しやすくなったりします。
感染症や脱水、治療の中断や甘いジュースの飲みすぎなどがきっかけとなって、ときに異常な高血糖をきたすことがあり、意識も障害され、すぐに適切に治療を行わなければ生命をおびやかすことがあります。急性合併症といって糖尿病ケトアシドーシスと、高浸透圧高血糖症候群があります。

診断基準について

糖尿病発症の有無を調べるための検査では、血液検査を行います。診断基準は以下の通りになります。

  1. 早朝空腹時血糖値が126mg/dL以上、または75gOGTT(75グラムのブドウ糖負荷試験)の2時間値が200mg/dL以上、もしくは随時血糖値が200mg/dL以上
  2. HbA1c値が6.5%以上

※①と②が共に該当する場合は糖尿病と診断されます。①もしくは②だけ該当するのであれば「糖尿病型」と判定され、再検査となります。同じ条件下で検査をし、再び「糖尿病型」となれば、糖尿病と診断されます。

治療について

治療の目的は、適切にインスリンを作用させて細胞に血糖値を取り込ませて、血糖値を正常な値まで下げ、高血糖による合併症を起こさせないようにすることです。タイプによって治療内容は異なります。

1型糖尿病の患者様は、体外からインスリンを補充していくインスリン療法となります。この場合、インスリン注射を1日に複数回注射することもあります。また2型糖尿病の患者様と同様に食事療法や運動療法も行っていきます。

2型糖尿病の患者様の場合、生活習慣の見直しから始めます。食事療法では、一日三食を規則正しくとる、バランスの良い食事、適正なエネルギー摂取量を守るといったことに注力します。また運動は、食後の高血糖の状態を下げ、インスリンの抵抗性を改善させる効果があるとされています。1日30分程度の有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳 等)が有効とされています。

上記の生活習慣の見直しだけでは血糖値が上手くコントロールできない場合は、経口血糖降下薬も併せて行います。種類としては、インスリン抵抗性を改善させる薬(ビグアナイド薬、チアソリジン薬)、インスリンの分泌を促進させる薬(スルホニル尿素薬、グリニド薬 等)、糖の吸収や排泄を調節する薬(α-グルコシダーゼ阻害薬、SGL T2阻害薬)、インクレチンを介して作用する薬(DPP4阻害薬やGLP-1)が用いられます。なお経口血糖降下薬でも血糖値の改善が困難と判断された場合は、インスリン療法を選択していきます。

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームイメージ

メタボリックシンドローム(通称:メタボ)とは、内蔵脂肪が多い肥満状態にあり、高血圧、脂質異常、高血糖が組み合わさることで、心筋梗塞や脳血管障害(脳梗塞 等)などの重篤な病気を発症しやすくなっている状態をさします。単にウエストがおおきいだけではあてはまりません。内臓脂肪蓄積が根本原因で、それに伴い高血圧や高血糖、脂質異常を引き起こしている考え方に基づいています(危険因子が重なっていることが主たる問題という考え方もあります)。
生活習慣病に罹患しやすいとされる40~74歳の世代を対象に、このメタボリック症候群を標的にした健康診断のことを特定健康診査(特定健診)と言います。この検診でメタボリックシンドロームとその予備群の判定、動脈硬化に関わる3大因子ともいうべき高血圧、血糖、脂質の問題を発見することができる内容になっています。

診断基準について

メタボリックシンドロームの診断ですが、まず腹囲(ウエストサイズ)を計測します。腹囲をもって内臓脂肪が多いかどうかを判定します。飲食直後でないときに、立った状態で、息を吸うときでなく吐く時に、おへその真上をメジャーが通り、水平になるように測定します。日本における基準では、男性で85㎝以上、女性で90㎝以上の方は内臓脂肪型肥満と判定します。この状態にある方で、以下の3つの項目のうち、2つ以上が当てはまるという場合にメタボリックシンドロームと診断されます。

脂質
血液検査で、中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dl以上、またはHDLコレステロールが40mg/dl未満
血圧
収縮期血圧(最高血圧)が130 mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が85mmHg以上
血糖
空腹時血糖が110mg/dl以上

動脈硬化症

動脈硬化症

心臓から各臓器・器官へ向けて送られる血液が通る道(血管)を動脈といいます。動脈を流れる血液を通して酸素や栄養素を全身の臓器・器官に届けています。この動脈は通常弾力がありしなやかですが、加齢やそのほかの影響で厚く、硬くなってしまうことが動脈硬化です。

動脈硬化にはいくつかの種類があります。
大動脈など比較的太い動脈に粥腫(じゅくしゅ)ができるのが、粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)です。これは動脈の内膜に血液中のコレステロールが変化して蓄積していき、お粥のようなドロドロした物質(プラーク)となり、結果として血管の内腔(血液が流れる部分)が狭くなったり、詰まったりします。血管の内側の壁が破れ、そこに血液が反応して血栓ができ、急に血管が詰まってしまうことがあります。このような仕組みで心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こします。高血圧、糖尿病、喫煙、高コレステロール血症などがあると、血管の壁にある内皮細胞を傷つけ、そこから白血球が侵入し、コレステロールをため込むことにつながっていきます。傷が少なくてもコレステロールが著しく高いと、やはり粥状硬化が進行しやすくなります。
比較的細い動脈が硬化してしまうことを細動脈硬化と呼びます。加齢や高血圧が原因で起こります。その他、動脈の中膜にカルシウムがたまって硬くなる中膜硬化(メンケルベルグ型硬化)があります。
動脈硬化は、喫煙・高コレステロール・高血圧・肥満・運動不足などの危険因子が重なることによって発症しやすくなります。

動脈硬化を評価するには

動脈硬化は全身に起こるのですが、検査で評価できる血管を、代表とみなして評価します。一つは首の血管の動脈硬化で、頚動脈を超音波で評価し、プラークを認めないか、狭くなっていないかなどを評価します。他には足の血管の血圧を測り、上腕の血圧と比べ、詰まり具合を評価(ABI)したり、脈が伝わる速さで血管の固さを評価したりする検査(CAVI)も一般的です。

治療について

動脈硬化は、喫煙、高血糖、高コレステロール血症(脂質異常症)、高血圧、肥満、運動不足などが代表的な危険因子ですので、それらの危険因子に対しての介入を行います。禁煙、食習慣の見直し、運動習慣の確立などを行っていきます。そのうえでさらに薬剤による脂質低下療法、血圧の適正化、血糖値の管理を進めていきます。

痛風

痛風

痛風は、高尿酸血症の方に起こります。高尿酸血症とは、血液中に含まれる尿酸が多くみとめられる状態で、血清尿酸値が7.0mg/dL以上の時に診断されます。

尿酸は水に溶けにくい性質で、尿酸値が7.0mg/dL以上になると結晶化していきます(尿酸塩)。これが体のあちこちに存在し、関節(とくに足の親指の付け根)に溜まるようになれば尿酸塩を異物と認識した白血球が攻撃し、その部位は瞬く間に腫れあがり、激しい痛みに襲われ、痛風発作を起こします。発症後は24時間をピークに痛みはだんだんやわらぎ、一週間もすれば治まるようになりますが、再発を繰り返します。

治療について

痛風発作を起こしているときには炎症を抑える消炎鎮痛剤(NSAIDs)で治療します。痛風発作が落ち着いた後、尿酸値を低下させる治療を進めます。尿酸を下げていくときには痛風発作が起こりやすいので、発作を抑えたい場合にはコルヒチンを併用します。尿酸値をさげる生活療法としては摂取カロリーの適正化、アルコールの回避、水分を多くとって脱水を避けるなどがあげられます。ただしなかなか生活療法だけで痛風発作を起こすような高尿酸血症をコントロールできることはまれで、薬剤が必要になることが多いです。尿酸値を下げる薬はおしっこから尿酸を排出しやすくする尿酸排泄促進薬と尿酸の生成を抑制する尿酸生成抑制薬の2系統があります。病状に合わせて使い分けます。

痛風発作を起こしていない高尿酸血症に対しての治療介入は、議論のあるところですが、痛風を起こしたことのある方には、薬物治療を含めた治療管理をお勧めします。