循環器内科とは

循環器内科イメージ

人体では常に血液が循環しています。この血液の循環に関係する病気を診るのが循環器内科(心臓内科)です。具体的には血液を送り出すポンプである「心臓」、血液が通る道である「血管」、またそれらに影響を及ぼす生活習慣病を主に担当します。
心臓の拍動のリズムが不規則になる不整脈をはじめ、心臓自体に十分な血液が行き届かなくなる虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、心臓のポンプ機能が何らかの原因で弱まってしまう心不全、心臓の4つの部屋の間にあって血液が逆流しないために働く弁が上手く機能しなくなることで起きる心臓弁膜症などの心臓の病気を診察します。また血管の病気としては、生活習慣病の代表的な疾患である高血圧症、脂質異常症をはじめ、大動脈疾患(大動脈瘤 等)、末梢血管疾患(閉塞性動脈硬化症等)などがあります。

なお、以下のような症状に心当たりがあれば、循環器疾患を発症していることが疑われます。お気軽にご相談ください。

  • 胸が痛んだり、締めつけられたりする
  • 少し動いただけでも息切れがする
  • 動悸がする
  • 脈が乱れる
  • 手足や顔がむくむ
  • 血圧が高い
  • 失神した
  • 検診で心電図異常などを指摘された
  • 胸部X線写真で異常を指摘された など

当診療科で対応する主な疾患

  • 高血圧症
  • 心不全
  • 心筋症
  • 心臓弁膜症
  • 不整脈
  • 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
  • 大動脈瘤
  • 大動脈解離
  • 脂質異常症
  • 肺高血圧症
  • 先天性心疾患など

症状

息切れ

息切れイメージ

呼吸をするのに努力を必要としたり、不快を感じたりする状態を指します。

息切れは心臓や肺の疾患が原因となっていることが多くあります。その他貧血、運動不足や肥満、ストレスなども息切れの要因となる場合があります。

当クリニックでは、経験豊富な医師が原因を評価し、適切な治療や改善策を提案します。診断には丁寧な病歴聴取の詳細な収集、身体、心電図、血液検査、肺機能検査、心エコーなどの検査が行われることがあります。

治療は原因に応じて異なりますが、循環器内科では薬物療法や生活改善の提案、必要に応じて手術や介入治療などの選択肢があります。また、適切な運動や栄養管理、ストレス管理などの健康習慣の指導も重要な要素です。

高血圧

高血圧というのは、血圧が高いという病態です。たまたま測った血圧が高いときには血圧が高いといえますが「高血圧症」とは言い切れません。高血圧症とは、座って安静にした状態で、くり返して測っても血圧が正常より高い場合をいいます。診察室血圧で最高血圧が140mmHg以上、あるいは、最低血圧が90mmHg以上であれば、高血圧症と診断されます。家庭で測定した場合の基準値は、平均して最高血圧が135mmHg以上、あるいは最低血圧が85mmHg以上であれば、高血圧症と診断されます。

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動悸

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心臓の鼓動が通常より速く、強く感じられる状態を指します。心臓の鼓動が規則的でない場合には「不整脈」と呼ばれることもあります。動悸は様々な原因によって引き起こされることがあります。一般的な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

1.ストレスや不安
心理的な要因やストレスによって、交感神経が刺激され、心拍数が増加することがあります。
大勢の前で話すときなど、緊張して動悸を自覚することが多いです。
2.運動や身体活動
運動中のように身体的な活動が高まった時、心臓は酸素や栄養をより多く供給するために頻繁に拍動します。
3.薬理活性物質の影響
カフェインやアルコール、ニコチンなどの刺激物の摂取によって、心拍数が上昇することがあります。一部の薬物やサプリメントは、心拍数の変動や不整脈を引き起こす可能性があります。また甲状腺機能亢進症など内分泌疾患で、体の中で余計な生理活性物質が産生され、動悸を引き起こすことがあります。
4.循環器系の疾患
不整脈や心不全などの循環器系の疾患が動悸の原因となることがあります。

動悸を診断するためには、病歴の収集、身体診察、心電図、ホルター心電図(24時間心電図をつけたまま日常生活をしていただき、長時間の心電図を解析する検査)、心エコー図、心肺運動負荷試験などの検査が行われます。

治療は、動悸の原因によって異なります。特定の刺激物の制限や避けること、ストレス管理、生活習慣の改善で症状がよくなることがあります。不整脈や循環器系の疾患の場合には、薬物療法や場合によって手術が必要となることもあります。

むくみ(浮腫)

むくみイメージ

むくみは、体の一部が過剰な液体によって腫れる状態を指します。特に循環器の問題でむくみが生じることがあります。手や足が腫れて重く感じられたり、顔や目のまわりに腫れが生じ、目が腫れたり、まぶたが重く感じたりすることがあります。

1.心不全
心臓のポンプ機能の低下により、血液が体の組織に効率的に循環しなくなります。これにより、体の組織に余分な液体がたまり、浮腫みが生じることがあります。
2.体液量過剰
心臓は問題なくても、腎臓の機能悪化、肝臓の機能悪化によって、体に余計な水分がたまり、むくみが出てくることがあります。
3.静脈性浮腫
静脈の弁の機能不全や静脈圧の亢進により、血液がうまく循環せず、浮腫みが発生することがあります。
4.血栓
静脈内に血栓ができると、血液の流れが阻害されます。これにより、血栓ができた部分より末梢側(心臓より離れた側)で血液が停滞し、むくみが生じることがあります。
5.薬剤
降圧薬や糖尿病薬、神経痛の薬の一部は、副作用としてむくみが起こることがあります。

むくみの治療は、その原因によって異なります。

1.基礎疾患の治療
心不全や血管の問題など、浮腫みの原因となっている疾患自体の適切な治療が行われます。
2.利尿薬の使用
余分な体液を排出するために、利尿薬を処方することがあります。
3.物理的治療、生活習慣の改善
足の高さを上げる、塩分摂取を制限する、圧迫ストッキングの着用などの治療が行われます。

胸痛

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胸痛の原因はさまざまです。特に急に発症し、20分以上続く強い胸痛は、心筋梗塞など致命的な疾患の可能性があるため、救急受診が必要です。

1.心疾患
心筋梗塞、狭心症、心不全、心膜炎などが原因で胸痛が起こることがあります。
2.肺疾患
気胸、肺炎、胸膜炎などが原因で胸痛が起こることがあります。
3.消化器疾患
逆流性食道炎、胃潰瘍、食道潰瘍、食道痙攣などが原因で胸痛が起こることがあります。
4.筋骨格系疾患
筋肉や筋膜、胸部の骨からの痛みが原因のことがあります。
5.皮膚疾患
帯状疱疹、肋間神経痛などが原因で胸痛が起こることがあります。
6.心因性
ストレス性、心因性胸痛が原因で胸痛が起こることがあります。

胸痛の診断は容易ではありません。詳細な病歴聴取、身体診察、心電図検査、レントゲン検査、血液検査、運動負荷試験などを行い、場合によっては基幹病院に紹介のうえ精密検査を行います。自己判断せず、気軽にご相談ください。

失神

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失神(気絶きぜつ、脳貧血)一時的に意識を失い、突然倒れる状態を指します。多い原因は一時的な脳への血流の低下です。意識を失っている時間は数秒~数分以内です。脳の病気より循環器系の疾患が原因であることが多いです。

1.反射性失神
ストレスなどの誘因で、またトイレに行った後、ひどい咳のあとに自律神経の過度の反応で血圧が下がり失神することがあります。反射性失神のなかまが原因の場合、冷や汗や上腹部の気持ち悪さなどの前兆があることが多いです。
2.起立性低血圧
急に立ち上がった時や立位で血圧が大きく下がり、失神することがあります。背景に脱水や貧血、神経疾患があることがあります。
3.不整脈
脈が非常に速くなる、もしくは遅くなり、結果として心臓が送り出す血液の量が少なくなり、血圧が下がり失神に至ることがあります。
4.心臓や大血管の疾患
心筋梗塞、心臓弁膜症、大動脈解離など大動脈疾患、肺動脈に血栓が詰まる肺塞栓などが原因で失神することがあります。
5.脳神経疾患
くも膜下出血やてんかん発作が失神として発症することがあります。

検診異常

検診異常イメージ

検診で異常が見つかった場合、早期対応、早期治療により新たな深刻な病気を防げたり、病気の悪化を防ぐことができたりします。精密検査や治療が必要と判定された場合は、はやめに受診ください。また経過観察の判定になった場合、多くは3~6か月後の再検査がすすめられます。

1.血液検査の異常
  • 肝機能異常: 肝臓に関連する問題がある可能性があります。腹部超音波や肝炎ウイルス、自己抗体などの追加血液検査を行います。アルコールや脂肪沈着が原因のことも多く、生活習慣の是正が必要なこともあります。
  • 腎機能異常: 腎臓に関連する問題がある可能性があります。タンパク尿があるかどうかが重要です。原因の評価と治療を進めていきます。
  • 血糖異常: 糖尿病の可能性があり、糖尿病の原因、合併症の有無について追加の評価が必要です。食習慣や運動習慣など生活習慣の是正と、場合によっては薬物治療が必要です。
2.心電図での異常
不整脈、冠動脈疾患、心筋疾患、心不全が原因のことがあります。胸部レントゲン検査、ホルター心電図、血液検査、心エコー図など追加の心臓評価を行い、原因を特定していきます。必要に応じて治療や薬物療法を提案します。

心不全

心不全イメージ

心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。心不全は、心臓に何らかの異常があるため心臓のポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、動くことがつらくなります。

心不全の症状はさまざまですが、以下が代表的です。

1.呼吸困難:
動いたとき、また夜間寝ている特に息苦しさがおこります。心臓喘息といって喘息のようにゼーゼーとした喘鳴が現れることがあります。
2.疲労感
日常的な活動や運動に対する持久力が低下し、疲れやすくなることがあります。
3.むくみ
手足、顔にむくみが現れることがあります。
4.動悸
心不全の症状として、または原因となる不整脈によって動悸を感じることがあります。

診断には、まず病歴の収集、身体診察、心電図、心エコー検査、血液検査、呼吸機能検査などが行われ、さらに必要に応じて心臓CT、心臓MRI、心臓カテーテル検査が行われます。

心不全は個々の原因を評価し、各々の原因に対する治療と、全体を「心不全」としてまとめておこなう治療を行っていきます。
個々の原因に対する治療は、例えば冠動脈疾患が原因の場合、血行再建術、弁膜症が原因の時は、弁膜症への手術治療を行います。
心不全としてまとめて行う治療は、薬物療法、生活指導、運動療法があげられ、これらを包括的に管理していくアプローチが心臓リハビリテーションです。慢性心不全は心臓リハビリテーションが特に意義がある疾患です。

虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)

心筋梗塞

心筋梗塞は、心臓の血管(冠動脈)の一部が詰まってしまい、血液の供給を受けられなくなり、その部分の心筋細胞は死んでしまう(細胞の壊死)病気です。ほとんどの場合、心臓の血管(冠動脈)の動脈硬化が内側に破れ(プラーク破裂)、血管の中に血液の塊(血栓)が生じ、血管が詰まってしまうことで起こります。現在でも命に係わる怖い病気です。

心筋梗塞の症状は強い、締め付けられるような胸痛で、すぐよくならず持続します。冷や汗や吐き気を伴うことも多く、首やあご、肩の痛みを伴うことがあります。高齢の方や糖尿病の方は胸痛が前面に出ず、何となく元気がないとか、嘔気と食欲不振とかが目立つことがあります。

心筋梗塞と診断した場合、一刻も早く、再灌流療法(詰まった血管の血流を再開させる治療)が必要なため、心臓カテーテル治療ができる基幹病院に搬送する必要があります。

狭心症

狭心症(きょうしんしょう)は、冠動脈の狭窄により心臓の血液供給が不十分になる状態を指します。心筋に十分な酸素や栄養が届かないため、身体活動やストレスによって胸痛や不快感が引き起こされます。
前述の心筋梗塞の仲間で、不安定狭心症と呼ばれる病態があります。心筋梗塞とは違い血流が完全には途絶せず、血流がわずかに流れているため、安静にしていたら症状が消失していますが、運動したり、安静にしていても何らかの拍子で血流が低下したりすると、胸痛が起こります。この場合、心筋梗塞と同じように原因となっている冠動脈へカテーテル治療を要すことが多く、心臓カテーテル治療ができる病院に救急受診する必要があります。
一方で徐々にまたは段階的に冠動脈の動脈硬化が進行し、冠動脈が狭くなり、運動やストレスで心筋が多く血液を必要としたときに、供給量が不足し胸痛を起こす労作性狭心症があります。

労作性狭心症に対して以前は、カテーテル治療や冠動脈バイパス手術が積極的に行われてきましたが、現在はまずどの部分に冠動脈の狭窄があるかどうかを確認したあと、前述の不安定狭心症でなければ薬物治療、生活療法、運動療法を行い、それでも症状が起こる、もしくは悪化する場合に限って手術が行われるようになりました。どこの動脈に狭いところがあるのかを調べるには、心臓CT、不十分な場合には心臓カテーテル検査が行われます。薬物療法は血管が詰まってしまわないようにする抗血小板薬(アスピリンなど)、動脈硬化を進めないようにする脂質低下療法薬(スタチンなど)、心臓を安静にするβ遮断薬、血圧を下げ心臓の負担をとる血管拡張薬(ACE阻害薬など)を中心に投与されます。
運動療法も効果的ですが、リスクを避けるため、運動強度・頻度・方法の設定は運動負荷試験の結果を得て、医師が慎重に決定する必要があります。
労作性狭心症(慢性冠動脈症候群)には薬物療法、運動療法、生活指導・是正を包括的に行う必要があり、この包括的なアプローチが心臓リハビリテーションです。

冠動脈カテーテル治療(PCI)後

冠動脈カテーテルイメージ

当クリニックでは冠動脈のカテーテル治療(PCI)のあと、退院した患者様のアフターケアも行っています。薬物療法と心臓リハビリテーションがその中核になります。当クリニックの近くにお住まいの方で、PCIの手術後の通院先が遠くて困っているといった場合は、一度ご相談ください。普段のかかりつけの先生に通って治療を受けるのはそのままで、心臓リハビリテーションのみを当クリニックで行っていくことも可能です。

虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の場合、詰まったり狭くなったりしている血管をカテーテルで治療することがあります。カテーテル(医療用の管)を手首や鼠径部、肘の動脈から挿入していきます。様々な道具で、狭窄部位の血管を拡張し、血流を回復させる治療行います。この手術を総じて経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と言います。当クリニックでは、このPCIによる治療を行った患者様のアフターケアをしていきます。
手術後の経過を管理し、心臓の機能維持、予後改善のために非常に重要です。

開胸手術とちがい、カテーテル刺入部の傷は小さく治りは早いのですが、まれに出血したり化膿したり、静脈との交通路ができたりして追加のケアが必要になることがあります。

内服薬の管理も重要です。治療をした部分が再度詰まってしまわないように抗血小板薬の服用(アスピリンとクロピドグレルもしくはプラスグレルの2種類)は一定期間継続する必要があります。再発予防に重要な脂質低下療法薬や降圧薬も術後、用量の調整を要することが多いです。通院していただきながらこれらの薬物の調整を行います。

病気についての理解を深めるため、プログラムに沿ってスタッフと病気や再発予防の知識の確認をしていきます。また食生活や運動習慣、ストレスの回避など生活習慣の改善を促していきます。また運動療法も予後改善、再発予防に効果的です。心配運動負荷試験により個別に適当な負荷量を決定し、運動処方を行います。心臓リハビリテーションは薬物療法にくわえ生活改善、運動療法、心理ケアなどを包括したプログラムで、PCI後の患者様において重要な役割を果たします。

不整脈

不整脈イメージ

不整脈は、心臓のリズムが異常な状態を指します。心拍数やリズムがおかしくなること症状がでたり、心機能の低下につながったりします。

頻拍(頻脈)
心拍数が通常より速い状態です。動悸や失神が起こることがあります。心臓がつかれてしまい心機能が低下することがあります。
徐脈
心拍数が通常より遅い状態で、心拍がゆっくりとなります。めまいやふらつき、失神、息切れなどの症状につながります。
不規則なリズム
心拍が規則ではなく、不規則な間隔で起こることを指します。動悸、胸部の不快感や心機能の低下につながることがあります。

不整脈の診断は心電図の診断と同義ですので、不整脈が出ているときの心電図がとらえられれば診断がつきます。持続的に不整脈が起こっている場合には標準的な12誘導心電図で診断できます。発作的にある時間帯、条件の時だけ出る不整脈に対しては、長時間装着する心電図(ホルター心電図。通常24時間装着します)で、発作が起こるのを待つか、運動負荷など心臓に負担をかけて発作が出やすくなる状態にして心電図を記録し、発作性に起こった不整脈を記録して診断します。
月に数回とか、稀にしか起こらない不整脈を診断するのは難しいですが、失神や脳梗塞の原因として疑われ、診断の必要性が高い場合、植込み型ループレコーダーといって、小型の心電図計を胸部の皮膚に埋め込んで記録することもあります。この場合3年程度心電図を記録し続けることができます。

不整脈の診断自体につながらないものの、原因検索や管理の方針決定のため、心エコー図、胸部レントゲン、血液検査など追加の評価を行います。

治療として大きく分けて以下の方法があげられます。

原因疾患の治療、生活習慣の改善
甲状腺疾患や弁膜症、心不全などの治療を行うことで不整脈を抑えることができることがあります。また禁酒や十分な睡眠、睡眠時無呼吸の治療で不整脈の頻度が少なくなることがあります。
薬物療法
症状が強い場合、心機能に影響を及ぼしている場合、不整脈の種類に応じて、薬物療法を行うことがあります。
カテーテルアブレーション
不整脈の原因となる、異常な電気信号を発する心臓の部位を破壊するために行われます。医療用の管を心臓にすすめ、その異常な組織を高周波などで破壊します。
ペースメーカー
徐脈を呈する不整脈の場合、ペースメーカーが埋め込まれることがあります。

不整脈の治療は、患者様の病態や不整脈の種類に基づいて個別に決定されます。治療は時機を逸すると効果が減弱することがあります。早めに受診し相談するのがよいでしょう。

大動脈疾患

大動脈瘤

大動脈の壁が拡張し、血管が膨らんだ状態です。大動脈瘤はしばしば無症状であり、偶然発見されることがありますが、破裂する危険性があるため、定期的な検査や適切な管理が必要です。

大動脈解離

大動脈解離イメージ

大動脈の壁が裂ける状態です。突然完成する激烈な胸痛、背中の痛み、呼吸困難などの症状が現れます。緊急の対応が必要で、種類によっては手術が必要です。

大動脈解離の手術は一般的に、体への負担が大きく、手術後も社会復帰のためにリハビリテーションが必要です。当クリニックでは退院後、通院でのリハビリテーションを継続し、社会復帰を支援します。

腹部大動脈に対しては禁煙が重要です。また心肺運動負荷試験を行い、適切な運動療法を行うことで、病気の進行の抑制、大動脈瘤手術時のトラブル減少が期待されます。

心臓弁膜症(大動脈弁狭窄症・大動脈弁閉鎖不全症・僧帽弁閉鎖不全症・僧帽弁狭窄症・三尖弁閉鎖不全症)

心臓には右心房・右心室・左心房・左心室の4つの部屋があります。順番に血液が流れていきます。順に血液が流れていく中で部屋と部屋、部屋と大血管の間で血液が逆流しないように、ドアのような逆流防止弁(僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁)があります。その弁が加齢・感染症・外傷・先天的(生まれつき)などの問題によって正常に機能しなくなることで、心臓のポンプ機能に様々な支障をきたした状態を心臓弁膜症といいます。
心臓弁膜症は物理的に問題が起こっているので、一般的に薬物治療だけで治療していくのは困難です。時機を逸することなく、適切なタイミングで根本治療である手術につなげることが重要です。まだ手術を必要としない軽症の場合は、丁寧に経過を見ていくことが大切です。

大動脈弁狭窄症

大動脈弁狭窄症は、大動脈弁が加齢による変性や生まれつきの異常(2尖弁など)によって、弁の開口が悪く狭くなり、血液の流れが制限される状態です。
当初は無症状ですが、進行すると呼吸困難や息切れ、易疲労感など心不全症状、胸痛、失神などが起こります。
大動脈弁狭窄症は軽度の段階から心雑音がありますので、聴診がきっかけで診断されることが多いです。心不全を発症してから原因検索の過程で見つかることがあります。
大動脈弁狭窄症の診断には、心エコーが重要で必須の検査になります。大動脈弁狭窄症は進行性の病気なため、丁寧に経過を見て、適切なタイミングで手術につなげることが重要です。
手術は以前から行われている開胸での人工弁置換術のほかに、近年ではカテーテルを使って人工弁を移植するTAVI(Transcatheter Aortic Valve Implantationの略語、経カテーテル的大動脈弁植え込み術)が行われるようになりました。以前は手術ができなかった90歳前後の方でも、元気な方であればTAVIが施行されるようになっています。

大動脈弁閉鎖不全症

大動脈弁閉鎖不全症は、大動脈弁が正常に閉まらず、血液が逆流する状態を指します。呼吸困難、息切れ、むくみ、易疲労感や動悸といった心不全症状のほか、徐脈や拡張期血圧(下の方の血圧)の低下がみられます。大動脈弁閉鎖不全症は特徴的な心雑音から発見、診断されることがあります。また心エコーの検査で偶然指摘されることや、心不全の原因検索なのかで発見されることがあります。
診断や手術のタイミングを判断するうえでも心エコーが重要な検査です。弁膜症の進行とともに心臓が大きくなるため、胸部レントゲンも経過を追うのに役に立ちます。
根本治療はやはり手術しかありませんので、適切なタイミングで人工弁置換術を判断することになります。

僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の僧帽弁が正常に閉まらず、血液が逆流する状態を指します。呼吸困難や息切れで発症することが多いです。逆流した血液は肺のむくみに直結するため、動いたときに顕著に呼吸困難が悪化します。
僧帽弁は複雑な構造をしており、構成に関係する心臓のそれぞれの部分の影響を受けます。弁にばい菌が感染して穴が開いたり、弁が翻らないように支えている腱索がきれたりゆるんだりすると弁が翻って漏れが起こります。このように弁自体が物理的に壊れて漏れが起こるだけでなく、構成するまわりの要素、左室や左房の拡大により弁がひっぱられることにより、弁がうまく閉じなくなり漏れが起こることもあります。
どれくらい逆流しているかといった漏れの程度の他、どのような原因が主体かを考慮して治療方針を立てていきます。診断には心エコーがやはり重要ですが、心臓の筋肉自体の問題にも影響を受けるため、心臓のMRIなど追加の精密検査が必要になることもあります。
僧帽弁閉鎖不全症の治療は、逆流が高度の場合はやはり手術が必要になります。自分の弁を温存して、切り取ったり縫ったり、枠をはめ形を整えたり、場合によっては腱索を人工のものにして修復したりして漏れを治す弁形成術がよく行われます。弁形成術がうまくいかない場合は人工弁に取り換える置換術を行います。開胸手術ができない場合、限られた症例ではカテーテルによる手術(経皮的僧帽弁クリップ術)が行われることがあります。

僧帽弁狭窄症

僧帽弁狭窄症は僧帽弁を構成する前尖と後尖が炎症を経て互いにくっつき、開きにくくなることによって生じることが多いです。この炎症は幼少期のリウマチ熱(溶連菌の感染のあとに、免疫が過剰反応を起こす)のことが多く、衛生状態がよくなり抗菌薬が普及するにつれてリウマチ熱自体がほとんど見られなくなりました。そのため僧帽弁狭窄症も現代ではまれな疾患になりました。
僧帽弁狭窄症の症状は息切れが多いです、左房に大きな負担がかかるため、心房が障害されることにより心房細動が生じることも多いです。
治療は症状や狭さの程度、患者背景によって異なります。中程度の狭窄で条件が良ければ、カテーテルにより特殊な風船(イノウエバルーン)による拡張術を行います。重度の場合、またバルーン拡張術が適さない場合は、人工弁への置換術が行われます。

三尖弁閉鎖不全症

三尖弁閉鎖不全症は、右心房と右心室の間にある三尖弁が正常に閉まらず、血液が逆流する状態を指します。3尖弁は構造的に緩く、心房が大きくなったり、右室が大きくなったりすることで容易に漏れが発生します。日常的に遭遇する三尖弁閉鎖不全症は、長期の心房細動を背景に、右心房左心房が多くなることによって、弁が合わなくなり、漏れが生じています。
三尖弁閉鎖不全症の症状は足などのむくみが多いです。病状の評価としてやはり心エコーが重要です。三尖弁閉鎖不全症の治療は、重症度、合併するほかの心臓病、合併するほかの弁膜症、年齢など患者の状態によって基づいて決定されます。三尖弁への手術介入の方法、時期については現在でも活発な議論がなされ確定しておりません。しかしほとんどの患者様が高齢の心房細動を背景にした方が多く、そのような方への手術は適応にならないことが多く、利尿剤を中心とした心不全の対症療法が選択されることが多いです。

心臓血管術後

心臓血管術後イメージ

心臓血管手術を行った方の心臓リハビリテーションも当クリニックで行っています。

  • 心臓弁膜症の手術(弁形成術や人工弁置換術)を受けた方
  • 冠動脈バイパス手術を受けた方
  • 解離性大動脈瘤の手術を受けた方
  • 大動脈瘤の手術(人工血管置換術、ステントグラフト内挿術)を行った方

心臓手術は体にとって大きな負担になるため、退院時点で体力は手術前の状態に戻っていません。心臓手術後に運動療法はおこなうことで,体力(運動耐容能)の回復,自律神経機能の回復だけでなく、QOL改善、精神面でもよい効果が期待されます。食事や生活習慣の是正なども含めた包括心臓リハビリテーションを行うことで再入院率の抑制、死亡率の低下など、さまざまな面での有効性が証明されています。
運動処方は心肺運動負荷試験により個別に状態を評価し、適切な内容で処方します。胸骨正中切開がなされた方は、骨の癒合が完成していないため、術後3か月の間は上肢を使う運動は制限する必要があります。

末梢動脈疾患

末梢動脈とは、手足の動脈、内臓の動脈、頚動脈、腎動脈を指しており、その動脈の病気を総称し、末梢動脈疾患といいます。原因の多くは動脈硬化が原因で、閉塞性動脈硬化症と呼ばれます。動脈が細く狭くなり、その動脈が担当する部分の血流が悪くなり、症状や障害が起こります。

足の動脈の場合

歩いた時の痛み
血流が乏しいため、歩くなど運動をしたときに足の痛みが起こります。
冷え
血流が乏しくなり、冷えを感じることがあります。
潰瘍、傷の治りが遅い
血流が少なくなり、小さな傷でも治らず悪化したり、治りにくかったりします。

腎臓の動脈の場合

高血圧
難治性の高血圧が起こります。
腎機能の悪化
腎臓の機能が悪くなります。

末梢動脈疾患の治療は詰まっている部分によって異なります。また急激に詰まったのか、慢性の経過なのかによっても異なります。
一般的に動脈硬化を進めないように脂質低下療法や狭い動脈が詰まったり、血の塊ができたりしないように抗血小板療法、抗凝固療法がおこなわれます。禁煙など生活習慣の是正も必須です。
症状が強い場合、血行再建といって血流を回復させる手術が行われます。
足の動脈硬化が原因である下肢閉塞性動脈硬化症で、安静時に痛みがなく、潰瘍などができていない場合、特に歩くと痛みが出て、休むと回復するといった症状(間欠性跛行)がある場合、運動療法が効果的です。側副血行が発達し、血流がよくなります。結果、歩行距離が増加し、延命効果もあるとされます。

心筋症

心筋症は、心臓の筋肉に問題があり心機能が障害されている疾患の総称で、遺伝的な背景が明らかになりつつあるものの、原因が特定しきれない原発性心筋症と、原因がはっきりしていたり、全身の他脳病気の関連で心臓が障害されていたりする2次性/特定心筋症に分かれます。
原発性心筋症(同義で特発性心筋症)は肥大型心筋症,拡張型心筋症,不整脈原性右室心筋症,拘束型心筋症,の4つに分類されます。

肥大型心筋症
心臓の筋肉(心筋)が異常に厚くなる
拡張型心筋症
心臓の内腔が拡張して心筋が薄くなる
拘束型心筋症
心筋が硬くなる

肥大型心筋症イメージ

肥大型心筋症は、心臓の筋肉が肥大し、心臓の壁が厚くなるのが特徴です。心臓の筋肉の遺伝子に問題がある場合が多く、現在11種類以上の遺伝子の異常が報告されています。6割くらいの方に家族歴(同様の心臓病が、血縁関係にいる)があります。遺伝子検査は有用ですが、保険適応になっておらず、必ずしも施行されるわけではありません。心筋の肥大は子供の頃からみられ、だんだんと進行しますが、進行がとてもゆっくりの方もいます。80歳くらいまで無症状で過ごされる方もいます。若いころは不整脈による突然死が問題になり、部活動などのスポーツ活動に制限が必要になることがあります。壮年以降は息切れやむくみといった心不全が問題になります。心筋の筋肉が疲れ果て心臓が拡張し弱ってくる方(拡張相肥大型心筋症)もいます。年齢が高くなってくると心房細動という不整脈が合併し、脳梗塞などが問題になることもあります。肥大型心筋症の方は、心臓が硬いので心房細動になると心機能が大きく低下し問題になります。一部のかたは肥大した心筋が、心臓の出口の部分を狭くしてしまい、血液が駆出されることを邪魔することが問題になる閉塞性肥大型心筋症というタイプになることがあります。

一般に肥大型心筋症は心電図で発見され、心臓の超音波検査で診断されます。肥大型心筋症はまず診断が重要で、高血圧性心筋症や心臓アミロイドーシス、ファブリー病といった他の病気で心筋が肥大する2次性心筋症を除外する必要があります。肥大型心筋症は本当にバリエーションというか経過が個々によって大きく異なりますし、人生の時期によって問題が変化していきます。今の問題を明確化して対応する必要があります。

拡張型心筋症

拡張型心筋症イメージ

拡張型心筋症は、心臓の拡張(左室内腔の拡張拡)と心筋収縮機能の低下が特徴的な疾患です。この左室の収縮低下と拡張は、疲れた心臓で一般的にみられる形で原因は多岐にわたりますが、原因が特定できないものを特発性拡張型心筋症といいます。
特発性拡張型心筋症は原因が特定できないから、「特発性」と呼ばれるわけですが、一部に遺伝子異常と慢性炎症が関わることがわかってきました。またそれらを背景に、さらに悪化要因が加わった時(セカンドヒット)に発症するパターンも指摘されています。

症状としては呼吸困難、疲労感、下腿浮腫、胸痛などが見られます。
拡張型心筋症の治療は包括的に進めます。

薬物療法
近年有効な薬が次々と使えるようになりました。利尿薬は弱った心臓にあわせて体液を調整するために使います。SGLT阻害薬という糖尿病にむけて開発された尿の中に糖分を捨てる薬が、心不全の体液管理に有用と分かり使用されることがあります。β遮断薬は心臓を安静にして、回復を助け、悪化を防ぐために使います。ACE阻害薬、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)は血管を広げ、心臓へ悪影響を及ぼす物質の働きを抑え、心臓の負担を取る薬です。アルドステロン拮抗薬は血圧上昇や心臓の肥大化などに関わるアルドステロンの過剰な働きを抑えて心臓の保護をする薬です。
デバイス治療
危険な不整脈があったり、心室内の電気の伝わり方に障害があったりする場合(左脚ブロックなど)、植込み型除細動器、心室再同期療法という特殊な器械を移植する治療が行われます。
運動療法
過度な運動は有害ですが、安静にしすぎることもよくないです。適切な運動処方による心臓リハビリテーションは安全で、心肺機能の回復、予後の改善につながります。
外科的治療
一部の重度の拡張型心筋症患者には、心臓移植や人工心臓補助装置(VAD)の検討が必要な場合があります。

肺高血圧症

血圧とは、動脈内の圧力を指します。肺高血圧は心臓から肺に血液をおくる動脈である肺動脈の血圧が高い状態です。肺高血圧症は肺動脈の圧があがり、血液の流れが悪くなることで心臓と肺に問題が起こる病気です。
肺動脈圧が高くなると、肺動脈に血液を送る役割を持つ右心室に大きな負担がかかります。初期にはなんとか右心室が頑張ろうとしますが、数年の経過で破綻して機能が悪化します(右心不全)、さらに進むと命を落とすことになります。
肺高血圧症の原因は、動脈自体に問題がある場合、肺に問題がある場合、左心不全に伴う場合、肺動脈内の血栓によっておこる場合、膠原病に伴う場合、肝疾患や薬剤の副作用によっておこる場合などがあります。原因によって治療方針が異なってきます。
初期は無症状の場合も多いですが、息苦しさや体のだるさ、足のむくみ、失神、喀血などの症状がみられるようになります。
肺高血圧症の多くは息切れなどの症状から、またはほかの病気の精密検査の過程で行われた心エコーで指摘されることが多いです。病態によって治療方針が異なるためCT、呼吸機能検査、血液検査、心臓カテーテル検査で評価していくことになります。またこの病気は一度経験豊富な専門家に、評価を仰いだ方がよいです。中国地方では岡山医療センターがもっとも豊富な症例を経験されていますので、初診の患者様は、まずこの治療で良いと思っていても、紹介させていただき、今後の治療方針を確認していただくことをお勧めしています。

高血圧症

高血圧症イメージ

血圧とは心臓から送り出された血液が流れる動脈内の圧力のことです。この圧力で全身すみずみまで血液をいきわたらせることができます。しかしその圧力が高すぎると、血管自体の壁を傷つけることになります。その傷が動脈硬化につながったり、血管の破綻(出血や動脈瘤)につながったりします。
診察室の血圧測定で、安静していて座位の時、収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、もしくは拡張期血圧(下の血圧)が90 mmHg以上の場合、高血圧と診断されます。家での血圧はそれよりひくめになることがわかっていますので、正常値は135/85mmHgとなります。短時間だけ血圧が高かったり、一度だけ血圧がたかいときがあったりしても高血圧症とは言いません。くりかえし、高い血圧が観察される必要があります。
高血圧症は自覚症状がほとんどみられません。そのため気づかないうちに、または高血圧といわれていても放置してしまい病状を悪化させてしまうことがしばしばみられます。その結果、脳血管障害(脳梗塞、脳出血)、心不全、腎臓病、虚血性心疾患が引き起こされます。

本態性高血圧症と二次性高血圧症

高血圧のおおくは、日本人の高血圧患者8~9割程度を占める本態性高血圧症です。これは原因が特定できない高血圧症とされ、遺伝的要因と日頃の生活習慣(塩分の過剰摂取、肥満、喫煙、多量の飲酒、ストレス 等)が関係しているとされます。
一方、二次性高血圧症と呼ばれ、原因がはっきりしている場合もあります。腎臓の動脈狭窄(腎血管性高血圧症)や原発性アルドステロン症、甲状腺機能亢進症、睡眠時無呼吸症候群 等があげられます。特に若い方で高血圧を起こしている場合、または治療になかなか難渋する場合は積極的に検索していく必要があります。

高血圧の治療はまず生活習慣の見直しから始めます。塩分制限(1日の塩分摂取量を6g未満が目標です)、野菜やカリウムの摂取(カリウムは塩分を外に出すのに役立ちます)、減量・肥満の解消も必要です。禁煙も必要です。お酒を控える必要があります。
生活習慣の改善のみでは、血圧が十分下がらない場合は、併せて降圧薬による薬物療法を行います。まずはカルシウム拮抗薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬が選択されることが多いですが、合併する疾患や、病態に応じて優先順位はかわります。単剤では効果が不十分の時は複数組み合わせることもあります。