• 1月 12, 2024
  • 1月 13, 2024

新型コロナウイルスワクチン 

まず私の考えとしては新型コロナワクチンについて肯定的にとらえています。

命の危険を感じながら診療していた2020年の頃と比べ、現在はウイルス性の重症肺炎に出会うケースは稀となりました。かといっても一定の頻度で重症化する方はおられ、コロナ後遺症ともいえる厄介な症状も報告されており、インフルエンザ程度というにはまだ時期尚早かと思います。2024年3月末で公費全額負担されるワクチン接種が終了するにあたり、現在わかっていることをまとめたいと思います。

感染予防効果

当初は90%以上の高い発症予防効果を示していました。感染予防効果は、周りの人がどれくらいワクチンを接種しているかや感染状況、変異株によっても左右され、過去のデータを、未来に適用していくのは難しくなっています。ワクチンを接種しても、また一度感染しても、時間がたつと抗体は段々減ってきますので、ある程度時間がたてば、再度感染することは考えられます。特に病原性は弱いが感染性は強いオミクロン株以降は感染予防効果は接種後2~3か月程度といわれます。

免疫刷り込み現象

そもそもコロナウイルス系には(旧来から)終生免疫は期待できないといわれています。なので一度かかったら大丈夫とは言えません。厄介な問題が指摘されており、免疫刷り込み現象といわれるものです。前回の感染で作られた体内の免疫の記憶は残されており、次回の感染時に速やかに抗体が産生されるようになっているのですが、以前の記憶が残りすぎていると、新しい対応への抗体産生が不十分になるとの報告があります。

そのため従来株とオミクロン株の2つの型をくみわせた旧来の2価ワクチンは、オミクロン株への産生が不十分になることも考えられるため、現在のワクチンはXBB.1.5系統対応1価ワクチンと1つに絞った形になっています。

1~2回ワクチンを打ったままで終わっている方は、XBB系統への免疫応答が不十分になっている可能性があり、今回のワクチンでしっかり免疫を強化しておいた方がいいと思われます。

今後も、新しいタイプが流行するたびに、免疫すりこみ現象を回避して抗体をしっかり産生させるためには、その都度ワクチンを打った方が良いと思われます。

まだ詳細は明らかにされていませんが、おそらくインフルエンザのように定期接種として、流行に合わせて毎年秋ころ、接種する形になると思われます。

重症化リスクの軽減

COVID-19の重症化リスクとしては、65歳以上の高齢者、肥満、高血圧、糖尿病などの基礎疾患があげられます。重症例では68%、死亡例では94%が65歳以上の型です。特に高血圧、糖尿病、慢性腎臓病を持つ高齢の方は注意が必要です。

ワクチンの重症化予防効果は感染予防効果にくらべて長く期待され、1年以上一定程度持続するといわれています。

実際診療を行ってきた立場としては、重症化予防効果におけるワクチンの効果は絶大であり、実感できるものです。

コロナ後遺症、long COVID

新型コロナウイルス感染の可能性がある、または感染が確認された人に、COVID-19 の発症から 3 か月以上(少なくとも 2 か月以上)何らかの症状が残存し、他の診断では説明できない状態を long COVID(post COVID-19 condition、postCOVID-19 syndrome)と定義されます。

三大症状としては、息切れ、認知機能障害(物忘れ)、倦怠感で、そのほか200 以上の症状の報告されています。この後遺症は10代でも起こり得て、若い方でも油断できません。

ワクチン接種は、 long COVID の予防効果も認められるとされます。リスクを約半分にするとされます。1回かかっていたら安心というわけではありません。何度も感染している人のほうが新型コロナ後遺症になりやすいといわれます。これは1度目より2度目の感染のほうが深刻になることを意味するわけではなく、単に再感染するたびに後遺症に見舞われる機会が増えると考えられています。

コロナの後遺症はなかなか、治療法が確立されておらず厄介です。EAT(Epipharyngeal Abrasive Therapy、上咽頭擦過治療)や和温療法には賛成の立場ですが、できる施設が限られるため、現時点で当院では鼻うがいをすすめたり、漢方薬を処方することが多いです。30~40代の方で集中力低下や物忘れの後遺症が残ると、仕事にも支障をきたすことが多く、ワクチンで可能なら予防したいところです。

副反応

ワクチン接種後、発熱(37.5℃以上)が25.0%、局所の疼痛が93.2%の方にみられるとされ、接種後の発熱やだるさはよく見られます。一定の頻度でアナフィラキシーや心筋炎など稀な副作用も起こりえます。個人的な見解では、今までに重篤な副作用が起こった方は接種を見合わせられたらいいと思います。基礎疾患の何もない若年者については、上記の後遺症のリスクを踏まえ判断するということになります。中高年以上の方、持病を持っている方はぜひ打った方がいいでしょう。ちなみに私も熱が出て、次の日は寝込むのですが、今まですべて接種しています。

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