• 11月 13, 2023

高血圧について 6 健康的な食生活

前回は塩分についてのお話をしましたが、食事での注意点は塩分だけというわけではありません。

塩分制限だけではダメ?

塩分制限は、いかにも体によさそうではありますが、塩分制限だけをするのはデメリットもあるという報告もあります。収縮期血圧が120〜159 mm Hg、拡張期血圧が80〜95 mm Hgのいわゆる高血圧の成人に対して、DASH食という塩分制限だけでなく低脂肪、野菜果物を多く取り入れた食事パターンと塩分摂取量を同じにして、特別食事の内容には踏み込まなかったパターンを比べると、単純に塩分制限を行ったグループでは炎症反応が上がってしまったという結果になりました(Effects of Diet and Sodium Reduction on Cardiac Injury, Strain, and Inflammation The DASH-Sodium Trial.JACC. 2019)。

体の中で炎症反応が上がるというのは、動脈硬化進展や病気の発症に関連していてよくない事とされていますので、「単純に塩分を制限」しただけでは、「体に良くない」ことも起こるということになります。これは少ないナトリウムを尿から再吸収して、再利用するためにレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系という、塩分を体にため込もうとする体のシステムが活性化されて、体の中のアルドステロンが多くなることが関係しているとされています。一方でDASH食パターン、すなわち動物性脂肪を控え、野菜、果物を多くとり、全粒穀物(精白をせず、果皮、種皮、胚、胚乳部を除去していない穀物。たとえば玄米、玄米を発芽させた発芽玄米、ふすまを取っていない麦、全粒粉の小麦を使った食品、オートミール、挽きぐるみのソバなど)、魚介類を多く取り入れた食事パターンはレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性化を抑えるためか、同じ少ない塩分摂取であっても、炎症反応が上がらないことがわかりました。

そのため、単純な塩分制限でなく、食事のパターンが大事ということになります。ただ日本人の平均の塩分摂取量は控えているといってもまだまだ多めで、それなりに塩分を取ってしまっています。なので塩分制限によるデメリットを過度に意識する必要はないかもしれません。

カリウムの摂取

先ほどのDASH食のように野菜や果物を多くとると、カリウムというミネラルを多くとることになります。カリウムの摂取は血圧を下げ、動脈硬化性疾患の発症を予防する点でも重要とされています。カリウムは体内の余分なナトリウムの排出を促す働きがあります。バナナ、イモ類、ほうれん草、アボカドなど、カリウムを多く含む食品を摂ることを検討しましょう。果物はカリウムをしっかりとるには、手軽ですが、甘いので糖質を多くとることになり、食べ過ぎに注意が必要です。穀物の胚芽部分にカリウムが含まれているので、主食に玄米を使えば、カリウムも食物繊維もとれて一石二鳥です。なお野菜からとる場合は調理法に注意が必要です。冷凍したり電子レンジで加熱したりしてもカリウムの量や質は変わりませんが、下ゆでして、水にさらし、絞るという調理法では、カリウムは水溶性なので、かなりの量が水に溶けて流れ出してしまいます。野菜スープや鍋など溶け込んだカリウムごととると良いかもしれません。

カフェイン、アルコール

カフェインは一部の人にとって血圧を上昇させる可能性があります。過度に意識する必要はないですが、多量のカフェインは控えたほうがいいでしょう。アルコールも短期的には血圧が下がるものの、長期的には血圧上昇を引き起こすため、すすめられるものではありません。適度な飲酒は体に良いとされていましたが、最近は否定的な研究結果も多くなっています。

持続可能で、健康的な食事パターンを

結局塩分だけ控えたらいいとか、〇〇だけを食べればいいとか◇◇を避けるだけでいいなどといった単一の食材や成分にこだわってはダメだということです。食事全体を大まかにとらえ、多くなりすぎないようにしたいグループ、積極的にとりたいグループを意識して、何年も何十年も続けられる、現実的に持続可能な食事がよい考えます。たまにご褒美としておいしいものを食べに行ったらよいし、羽目を外すときもあってしかたないですが、普段の食事がより健康的なパターンであるといいと考えます。

その健康的なパターンとは

といえます。ぜひご検討ください。

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