• 10月 11, 2024

2024-2025シーズン 新型コロナワクチン・インフルエンザワクチンについて

最初に結論を

  • 高齢者は受けたほうがいい
  • 子供は受けたほうがいい
  • 医療福祉関係の仕事をしている方は受けたほうがいい
  • 入院や死亡の回避のために高齢者はうけたほうがいい
  • コロナ後遺症の予防のため壮年期の人も受けたほうがいい

そもそも上気道炎のウイルスの特性

小児はウイルスへの感染経験が少ないため、かぜにかかりやすく、1年間に5~10回かかっています。年齢を重ねるにつれて風邪ウイルスへの免疫バリエーションが多くなり、それをすり抜けたウイルスに感染することで、かぜ症候群を起こします。通常中年以降で大人では年間1~2回に減少していきます。高齢になるにつれてかぜが多くなるわけではないので、高齢者になるほど風邪以外の熱の原因を考えなくてはなりません。

コロナウイルス系はそもそも終生免疫が得られないため、くりかえしかかります。新型コロナウイルス(以下COVID-19)が出現する前から、コロナウイルスはもともとかぜ症候群の重要な原因ウイルスでした。またCOVID-19をふくむコロナウイルスは変異しやすいのが特徴です。

一方でインフルエンザは1回かかると終生免疫が得られますが、血清型が多いため、別の血清型のウイルスが流行するとかかってしまいます。

  • インフルエンザウイルス

終生免疫が得られるが、血清型が多い。経験していない血清型にであうとかかる。

  • コロナウイルス

終生免疫が得られない。時間が空いたり、または別の型に出会うとかかる

新型コロナワクチンの現状を解説します

●一時期より弱毒化しているが感染力は強い

ワクチンと4年前からの散発的に流行していることで日本人の抗体保有率は上がっています。デルタ株のような病原性の強いタイプは流行しておらず、オミクロン株以降、その亜型の感染力の強いタイプがひきつづき流行しています。しばらくその傾向が続くと思います。

●上気道炎で終わることが多いが、全身病という側面がある。

コロナウイルスはヒト細胞表面にあるACE2受容体に結合します。この結合により、ウイルスがヒトの細胞に入り込み、そこで自身の遺伝情報を複製し、新しいウイルスを生成します。

ACE2受容体は全身に存在するため、多くの臓器に影響を及ぼします。味覚障害が生じるのは、上気道や神経の細胞に影響するため、ブレインフォグといって認知機能や記憶に影響するのは脳神経の細胞に影響するからです。目にもACE2受容体が存在し、感染経路としての目の保護が推奨されているのもそのためです。下記は全身のACE2の分布を示しています。全身に幅広く存在ているのがわかると思います。

ちなみにACEはレニンアンギオテンシン系という、体の塩分を調節する仕組みにかかわっており、循環器医にとってはなじみの深い受容体です。

以下はコロナウイルスの全身の臓器における量を調べた研究結果です。上気道や肺に多いのは確かですが、消化管、尿路、神経でも増殖が認められています。病原性が全身で幅広く発揮されているといえます。このことは多様なCOVID-19の症状、多様なCOVID-19後遺症に関係しているといえます。

参考文献】Trypsteen W, Van Cleemput J, Snippenberg WV, Gerlo S, Vandekerckhove L. On the whereabouts of SARS-CoV-2 in the human body: A systematic review. PLoS Pathog. 2020 Oct 30;16(10):e1009037. doi: 10.1371/journal.ppat.1009037. PMID: 33125439; PMCID: PMC7679000.

  • 今も高齢者には怖い病気

ワクチンによる免疫が確立し、また強毒株でなくなり、死亡率は大幅に下がりましたが、いまだ特定の方にとっては命にかかわる病気です。

弱毒といわれるオミクロン株以降の死亡者数はどうなっているのでしょうか。

基礎疾患というより年齢が大きく死亡率に影響していることがわかります。

これからいえることは高齢者にとってはCOVID19はいまだ怖い病気であるといえます。

図の引用:https://www.pfizerpro.jp/medicine/comirnaty/disease/high-risk-factor

  • 一度かかってもまたCOVID-19にかかる

コロナウイルス系はそもそも終生免疫が得られないので、時間が経過するとかかります。COVID-19は変異しやすいので、一度かかって免疫を確立してもすり抜けて感染します。

この2024年10月から接種が開始されたワクチンはJN1株へのワクチンであり、JN1から派生したKP3にも効果があります。なので去年までしっかりワクチンを打った方とか、すでにかかったという方も新たにワクチンを打つメリットがあります

参考:Kaku, Yu et al. Virological characteristics of the SARS-CoV-2 KP.3, LB.1, and KP.2.3 variants. The Lancet Infectious Diseases, Volume 24, Issue 8, e482 – e483

  • 次の流行は2025年2月頃

現在COVID-19は年2回のペースで流行を繰り返しています。次の流行は2025年2月思われます。

  • コロナ後遺症は壮年期に多い

コロナにより死亡者は高齢者に圧倒的に多いことは上でのべましたが、後遺症はどうでしょうか.

参考:https://www.nature.com/articles/s41398-024-03108-2

コロナ罹患後、2.5カ月の時点で7割の方が何らかの後遺症を訴えており、集中力低下3割、記憶力低下3割5分など、認知機能の後遺症も比較的多く認められます。もちろん長い経過でゆっくり回復が期待されるとはいえ、長時間症状が続く方が、結構いるというのは驚きです。感染を繰り返すたびに、コロナ後遺症を訴える確率は多くなるともされており、重症化や死亡の確率は低くてもかからないほうがよさそうです。参考文献:プレプリントですので注意が必要ですがhttps://www.researchsquare.com/article/rs-4909082/v1

アメリカの研究データ(https://www.cdc.gov/nchs/data/databriefs/db480.pdf)

コロナの後遺症を引き起こしやすいのは35~49歳の壮年期といわれます。またこの研究からアジア人の後遺症のリスクは低いようですが、先述したようにくり返しかかるとリスクが高まるという点からも、かからないほうがよさそうです。

まとめ

以上、今の状況をまとめると

子供や20代は、死亡や重症化リスクは低いので、コロナ後遺症を予防したいという点ではワクチンも考慮されます、ワクチンの副作用も気になります。個人的には感染初期の症状に応じて抗ウイルス薬を使ってみてはとおもいます。

  • 実際のコロナワクチンによる予防効果は

感染予防効果は、周囲の感染状況や免疫獲得率などによって左右されるので、正確には言えませんが、6割程度と推定します。

  • 2024/25シーズン新型コロナワクチン

当院ではコミナティ(ファイザー)、ダイチロナ(第一三共)を採用しています。

今シーズン日本で提供されるワクチンはJN1株(単価)へ効果のあるワクチンです。

鳥取市の方は65歳以上(60~65歳以上の一定の障がいを持つ方も)の方は補助が受けられます。

自己負担 

市民税課税者、市民税課税者と同一世帯の方:2,100円

世帯員全員が市民税非課税の方:700円

生活保護世帯に属する方、中国残留邦人の方:無料

  • こぼれ話 抗ウイルス薬について

批判の多い抗ウイルス薬ですが、私は評価している立場です。ゾコーバはオミクロン株以降に臨床試験がなされたため、もともと低い重症化率のなかで、重症化予防の効果を実証することはできませんでした(パキロビットなどもオミクロン株以降ではなかなか有効性をしめしきれていないです)。しかし副作用は少なく、ほかとくらべて安価(といっても自己負担で3割負担の方で15,000円くらい)で、ウイルスを早期に減らすことができます。ウイルスを減らすということは、周囲への感染を減らすということになりますし、まだコロナウイルスの全身への影響が解明されていないので、ウイルスはできるだけ早く排除することで全身への後遺症(認知機能や免疫異常など、まだ定量化されていない問題)を減らすことができるのではと思うからです。

インフルエンザは毎年冬に流行するウイルス性の呼吸器疾患です。A型やB型などいくつかのタイプがありますが、特にA型は大規模な流行を引き起こします。コロナ以降、冬の流行が目立たなくなりましたが、最近また冬の流行に収束しつつあります。感染経路は 飛沫感染が主です。コロナウイルスとほぼおなじ感染経路とおもっていただいてよいです。

インフルエンザは特に乳幼児、高齢者、持病のある人は重症化リスクがあるとされます。

やはりインフルエンザの脅威が減ったのは治療薬があるという点ですね。

2023/24 シーズン累積のインフルエンザ推計受診者数は約 1801.9 万人と2018/19 シーズン以降、最も多っかようです。昨シーズンはインフルエンザワクチン使用量が 2,432 万本(供給量 3,135 万本)で2010/11(平成 22 年)シーズン以降最も少ない使用量なので、ワクチン接種が少なかったことも原因といえます。

  • インフルエンザワクチンを打った方がいいのは乳幼児と高齢者

季節性インフルエンザで重症化のリスクが高いのは高齢者と、乳幼児です。

日本の小児でも約 50~60%の感染予防効果と、入院阻止率は70%減少とされます。

  • 2024/25 シーズン季節性インフルエンザワクチン

日本で今シーズン発売される不活化ワクチンはすべて以下の4つの型に対するワクチン(4価)です

  • A/Victoria(ビクトリア) /4897/2022(IVR-238)(H1N1)pdm09
  • A/California(カリフォルニア) /122/2022(SAN-022)(H3N2)
  • B/Phuket (プーケット) /3073/2013 (山形系統)
  • B/Austria(オーストリア) /1359417/2021(BVR-26)(ビクトリア系統)

鳥取市の方は

65歳以上(60~65歳以上の一定の障がいを持つ方も)の方は補助が受けられます。

自己負担は 

   市民税課税者、市民税課税者と同一世帯の方:1,300円

  世帯員全員が市民税非課税の方:300円

  生活保護世帯に属する方、中国残留邦人の方:無料

満6か月以上65歳未満の重度の心身障がい者・重症心身障がい児(障がい支援区分6の方)も補助がうけられます。13歳未満:2回 13歳以上:1回 の接種が進められています。

  自己負担は 

   市民税課税者、市民税課税者と同一世帯の方:1,300円

   世帯員全員が市民税非課税の方:300円

   生活保護世帯に属する方、中国残留邦人の方:無料

満6か月以上から小学6年生までの小児も2回接種が必要なうち1回について、2,320円が補助されますので、自己負担は1,180円となります

  • インフルエンザの経鼻生ワクチン

経鼻のインフルエンザワクチンも今シーズンから発売されましたが、供給量が限られており、小児科でない当院には回ってこないため用意できません。すみません。

生ワクチンですので、施行後にかるい上気道炎を発症することがあります。

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